悉皆 (sikkai) よもやま話 HOME
某月某日
『着物は好きだけど一人で着ることが出来ない・・・』ってよく聞きますが、
市田ひろみさんが監修した着物着付けのDVDが京都和装振産業興財団から
販売されてます。
20枚以上買う場合は1枚200円です!
全国の着物呉服店様、お客様に無料でお配りしては・・・?
新規顧客の開拓につながると思うんですがね・・・。 某月某日 某月某日 問屋さんからの相談で、 着物を買っていただいたお客さんの体型を計ると、
着物の柄合わせがずれるんですが・・・。 仕立て寸法の指図はどれぐらいですか? 標準より前幅、後幅共に3分(1.1cm)づつ広いんですが・・・。 それぐらいの幅だったら、きっちりと柄を合わせて仕立てたほうが綺麗ですが・・・ ドレスと違って少々フィットしてなくても着られるのが着物の良いところでしょ。
それにプロが着付けるのでしょうから、・・・・・。 店頭で着物を売っている人は本当にどこまで着物の事が解っているのかなって思いますね。
某月某日 お祝い事に使う家紋入りの風呂敷を、ご近所の奥様が持ってこられました。 『3日後にお祝いを届けようと思って箪笥から出してみるとこんなになってしまったんです。』とおっしゃるんです。 白山紬の風呂敷の家紋の所には薄茶色いしみが無数に付いていました。 明らかに【カビ】です。染み抜きの職人さんの所で落としてみましたが、やはり落ちませんでした。 普段使わない物ですがいざと言う時のために着物同様に必ず虫干しをなさって下さい。 某月某日 色留袖の紋入れ加工の依頼だが、与えられた加工日数が数日しかない! 誂え染めで無い限り、お買い上げになられたお客様の任意の家紋を入れるために紋の入る処も染まってます。 そこで紋抜き(家紋の形に地色を抜く)をし、そこに「上絵」とよぶ細い墨の線で家紋を表す。 最近の色留袖は対光堅牢度を上げるため、特殊な染料(ガンキン)を使うことが多い。 したがって、従来の染料に較べ【紋抜き】に4倍ぐらいの手間がかかる。なぜなら、生地を傷めないように 何第階にもわけて徐々に色を薄くして最終的に生地の色になるまで繰り返さなければならないのです。 流れ出るのを防ぐため、丸く大きな「堰」をゴムで作る。(堰出し) (強い薬品で一度に抜くと、生地がボロボロになる) 繰り返し徐々に白く抜く。 『指定の納期では無理が生じます』と返答したところ、『仕立ての日数を短縮するので』とそのぶん数日猶予をもらった。 仕立屋さんが後苦労なさったんでしょうね。(笑) 教訓 このようにお手元に届くまで、付帯加工や仕立てなどに意外と日数が掛かるので、特別な事情がない限り、 着用予定から逆算して少なくても2〜3ヶ月前に着物地を購入なさると丁寧な仕事をした着物が出来ると思います。 ※中濃度の地色で従来の染料を使って染められた着物の紋抜きは次の通りです。 直しながら乾かす。最後に紋章職人の手で細い線を描き家紋の完成です。 某月某日 色留袖の染め替え(地色を地味なものにする)依頼があった。 主たる柄は総刺繍だ。 背景の柄は金彩(金銀箔や泥金だけで模様を表す)だ。元の色の上から希望の色になるように調合した染液を 引き染めすることにする。 主たる柄を糊で防染すると刺繍が傷む。こういった場合、蝋で防染するのだがこれだと 染め上がってから蝋を落とすのに揮発性の溶解剤を使わなければならない。 そうすると背景の金彩部分が剥がれてしまう。仕方がないので、模様の部分を避けて「ぼかし」染めにした。 事前の処理として、生地の「擦れ」「汚れ」がないか点検し、背の処に「一つ紋」が入っているので、新たに染める染料で汚れないように、 「紋糊職人」の手で、元の紋の通りにゴムを置き防染する。 いよいよ、「ぼかし引き染め」→「蒸し」→「水洗」→「紋ゴム落とし」→「湯のし」→「金箔の付加加工」→「紋上絵の描き直し」→「染め行程完」 →「再仕立て」→を経てやっと「完成」 です。 感想 以上のように結構沢山の職人さんの手に依ると言うことです。ねー、結構厄介でしょ。(笑) 某月某日 古いしみの付いた着物の場合。 某月某日 問屋さんの依頼で制作して数ヶ月後に某小売店に買っていただいた黒留袖の地色(植物染め・三度黒染)が変色していると 言ってこられました。【*三度黒=ログウッド、ノアールと染め重ね、クロム酸で酸化還元して黒色にする染法】 現品を見せていただくと、確かに部分的に黒が濃い緑がかった色になっていた。 仮絵羽(着物の形に仮縫い)を解いてみると縫い込み(表に出ない生地幅の両側で、“のりしろ”のような部分)の内側は 全く変色していない。 と言うことは染め加工中の原因ではなく、仮絵羽になって納入後、何らかのガスに晒された結果、化学反応を起こし 変色したものと思われる。 なぜなら、この着物のように【三度黒】の場合、高濃度のガスに晒されると変色する場合があるからです。 後日小売店さんに問い合わせをしていただいたところ、店舗改装に伴い、陳列什器を新調されたそうです。 その陳列器具はラッカーらしきもので塗装されたものでした。結果、塗装に使われた溶剤残留していて そのガスが変色の原因だと特定された。 『染め直しが出来るか』との問い合わせがありましたが、元の黒色と変色した部分の濃度差がひどいので、 それを均一な濃度に染め直すことは非常に危険でもある。なぜなら、元の黒色は、もう既に過剰なほどの染料が乗っていて、 真黒な状態になっている。そこへ更に染料を乗せた場合「染め付きムラ」や「色落ち」する可能性が高い。 そのように回答させていただいたところ、直し依頼は中止になったようです。 最終的にどのように決着したのか・・・たぶん、陳列器具を納入した業者との間で話し合われたのかなと思われる。 教訓 新築の家やマンションで真新しい箪笥などに収納する場合、建材や塗料が大切な着物に悪影響を及ぼすことが
あるかも知れないというとですね。 このページに掲載している写真は京都染色補正工業協同組合発行の「染色補正の技術・技法」より転載しました。
昔からお世話になっている黒染屋 F さんの若嫁さんが、嫁いで来られてすぐに結婚式があるという事で、
黒留袖が必要になったそうです。
そこで F さんの奥様がかれこれ30年前に、弊社でお買い求め頂いた黒留袖(F さんの所で染めた)を
若奥様用に仕立て直しされたそうです。
仕立てを解いてみて驚かれたそうです。
地色や友禅の色に何の変色も見られなかったからです。
『普通に丁寧な仕事をした着物はやはり一生ものなんですね』と言われた時は
染匠冥利に付きました。
@紋糊職人の手により紋の形にゴム糊を置くが、その際、抜染薬が紋の外側へ
A薬品で色抜き中。紋の下に熱したコテを押しあてている。
B一旦薬品を充分に洗い流し、少し生地を休ませる。その後、A、Bの作業を
@紋型紙を当てて、薬品を塗る。(写真は上身頃の背紋。)
A線が途切れている(型の「つり」)部分にも薬品を塗って完全な紋の形にする。
B熱したコテで抜いた後、薬品を充分に洗い流す。最後にコテで生地の縮みを
シミが茶色く変色している。
酸化剤、還元剤をつかって、薄くしていく。
シミが残ったところには、新たな柄を書き足して見苦しくないようにする。